【感想・考察】イワンのばか【トルストイ】

感想・考察 (8) 物語
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※ネタバレ注意!
この記事には作品のネタバレが多く含まれております。未読の方はご注意ください。

ナラ
ナラ

イワンのばかは1886年に発表された作品だよ

ロジィ
ロジィ

1800年代っていうと、マルクスやエンゲルスといった人たちがコミュニズムを発展させていった時代だな

ナラ
ナラ

イワンのばかもその影響うけている作品っぽいね

ナラの感想

とても分かりやすい文章

直截ちょくさいで、はっきりした言葉選びの文章だから、話の内容が分かりやすい。

だからこそ、イワンの作った国が、とても魅力的に見えるのかもしれない。

皆が協力して、物を分け合って生活を成り立たせるという思想が素晴らしいことだと感じるには十分な作品だと思う。

でも、分かりやすいってことは、複雑なところを削ぎ落として簡略化したってことなんじゃないかな。

無欲であること

シモンは自分の力で他の国を屈服させたかった。
だから兵隊になって地位を高めて軍事を強化した。

タラスはとにかく富が欲しかった。
だから商人になってお金をかき集めた。

主人公のイワンは?
イワンは二人の兄に比べて欲が無かったんだ。

イワンは自分のものを欲しがらず、必要な人に自分のものすら分け与える人だった。

イワンは毎日働いて、日々を過ごすことに充実を感じていてから、他の欲求なんか無かったし、力もいらない、お金もいらないと本気で思っていた。

力で他の人から何かを奪うなんて考えられなかったし、お金で他の人を扱き使ったり、自分だけで富を独占しようだなんて、思いも寄らなかった。

つまり、自分だけの幸せなんて、考えてなかったんだよね。

でも、結局一番幸せになったのは誰?

無知は力なり?

イワンは物を知らない上に想像力が欠如していたから、悪魔から貰った力で自分だけ得するなんてことは考えなかったし、そもそもそんな生き方を知らなかった。

だから、最後に悪魔が大演説を振るった時も、イアンとその国民は、悪魔の言っていることを欠片も想像できなかった。

それどころか、肉体労働が仕事だと考える彼らは、いつ頭を使って仕事をするのだろうと、ただ悪魔を眺めるだけで、悪魔の言葉は「何か喋っているな」程度にしか認識していなかったんだ。

浅学で、知識が乏しかったからこそ、悪魔の誘惑に打ち勝つ……というか、そもそも悪魔の誘惑に気づきもしなかったんだ。

無知は力なり

ジョージ・オーウェルのSF小説「1984年」に出てくる言葉なんだけど、「イワンのばか」はまさにこの言葉を体現した作品だと思う。

ヒトは知らないものに対して興味や欲求を持つことができない

だから、知る必要のないことは知らなくていいし、知らないで幸せならそれで充分。

余計な知識が欲を生んで、不幸な出来事を生むくらいなら、ヒトは無知で良い。

余計なことは考えず、愚直に働くこと。そして、隣人を愛すること。悪いことはしないこと。

これこそが、正しいヒトの道だって説いているのかもしれないね。

まぁ、他国に攻められたときに無抵抗でいることが最善の策だってことは、自然界じゃ到底考えられないことだけどね。

ロジィの分析

対立が物語を転がす

ところが、それを年よった悪魔が見ていました。悪魔は、兄弟たちが財産の分け方でけんかをするだろうと思っていたのに、べつにいさかいもなく、仲良く別れて行ったので大へん腹を立てて、早速三人の小悪魔しょうあくまを呼び集めました。

トルストイ/菊池寛訳『イワンの馬鹿』青空文庫

物語には対立が必要だ。

それは人や動物であったり、社会システムであったり、あるいは自分自身の精神的な葛藤であってもいい。

イワンの馬鹿では、年寄った悪魔の存在がイワンと対立する敵対者である。

イワンは誰とも争わないが、年寄った悪魔は人間同士が争うこと望んでいる。

ややこしいが、悪魔は対立を求めてイワンと対立するのである。

敵対者と思いきや・・・?

「どうかひどくしないで下さい。そのかわり何でもあなたの言いなり次第にいたします。」
手前てめえ何が出来る。」
「あなたの言いなりに何でも。」
 イワンは頭をかいて考えました。そして言いました。
「おりゃ腹が痛い。どうだ、なおせるか。」
「はい、なおせますとも。」
「よし、じゃなおしてくれ。」
 小悪魔はすぐ畝の中へ這い込んで、しばらく爪で引っかいてさがし廻っていましたが、やがて、三本根の出た木の根を引っこぬいて来て、イワンに渡しました。そして、
「この根を一本だけお上りなさい。これを召し上がればどんな病気だってなおらないことはありません。」
と言いました。

トルストイ/菊池寛訳『イワンの馬鹿』青空文庫

おとぎ話の世界では敵対者だけでなく、主人公を助ける贈与者という役割をもつものが現れる。

主に善良な魔法使いのような存在が使われるが、イワンの馬鹿では3人の小悪魔がイワンに魔法を与える贈与者の機能をもっている気がしてならない。

彼らは、イワンを陥れようと苦心するが物語の機能としてはイワンを助け、暮らしを豊かにする役割を担っているのである。

遅れてくるのはヒーローだけじゃない

年よった悪魔は、三人の兄弟を取っちめたと言うたよりが来るか来るかと待っていました。が待っても待っても来ませんでした。そこで自分で出かけて行って、調べはじめました。

トルストイ/菊池寛訳『イワンの馬鹿』青空文庫

英雄は遅れてくると言うが、悪役もけっこう遅れてくる。

考えてみれば、真の悪役と呼ばれるキャラクターは悪の世界では英雄的な存在であるわけだから、遅れてくるのも当然なのかもしれない。

イワンの馬鹿の悪役、年寄った悪魔も大分遅れてきた。

イワンたちが王様に成り上がるまで何も気付かずに過ごしていたというのは中々愛嬌のある悪魔だ。

よほど部下を信頼していたのかもしれない。

ナラと

ナラ
ナラ

無知は力なり

ロジィ
ロジィ

ビッグブラザーがあなたが見ている

ナラ
ナラ

うん、別の作品になっちゃうね

※ ジョージ・オーウェル「一九八四」

ナラ
ナラ

「イワンのバカ」は確かに

ちょっと考えさせられる作品だねぇ

ロジィ
ロジィ

コミュニズムの時代だからな

トルストイの思想がモロに出てる作品じゃないか

ナラ
ナラ

皆が平等に働いて、皆でものを分かち合う

確かに、これが一つの平和の完成系かもって思うんだ

無知 = 無欲なのかもしれないね

ロジィ
ロジィ

うむ、人類全員悟れば可能かもしれないな

ロジィ
ロジィ

ならば今すぐ愚民ども全てに英知を授けてみろ!
※ シャア・アズナブル「逆襲のシャア」

ナラ
ナラ

いや、自分で言っといて……

ナラ
ナラ

まぁ、でもやっぱり自分だけじゃなくって

他人を思う気持ちはやっぱり大切なんじゃないかな

ナラ
ナラ

欲の全てを否定するわけじゃないけど

自分が最優先になっちゃうと、どうしても争いが起きるからね

ロジィ
ロジィ

確かにそうだな

ナラ
ナラ

闘争か逃走かっていうのがあってね

急性ストレス反応とも言って、動物は何か差し迫った状態になると、戦うか逃げるかを判断するんだよ

ナラ
ナラ

自然界では大抵生き残れるかどうかを決める重要な生体機能なんだ

ロジィ
ロジィ

ほほぅ

ナラ
ナラ

これは人間にもちゃんとあってね

普段の生活でも見られる反応なんだ

ロジィ
ロジィ

つまり、戦うというのは予めプログラムされている

ナラ
ナラ

争いを止めるには、恐怖をどうにかしないとね

まぁ、これが難しいんだけど

ロジィ
ロジィ

恐怖が無くなってしまっても

それこそ恐ろしいしな

ナラ
ナラ

そういうことだね

ナラ
ナラ

だから、他人を思う気持ちが大切なんだと思う

ロジィ
ロジィ

いっそ他人の考えが見えれば楽なのかもな

ロジィ
ロジィ

全員サトラレ

ビッグブラザーがあなたを……

ナラ
ナラ

いや、もういいよ!

コメント

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