【感想・考察】オツベルと象【宮沢賢治】

感想・考察 (5) 物語
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※ネタバレ注意!
この記事には作品のネタバレが多く含まれております。未読の方はご注意ください。

ロジィ
ロジィ

「オツベルと象」は1926年に発表された宮沢賢治の作品

ナラ
ナラ

宮沢賢治って言うと、他にも「雨ノモマケズ」などの詩や、「注文の多い料理店」とかの童話が有名だよね

ナラの感想

愉快なリズムとオノマトペ

愉快なリズムの文章で、何だか歌っているようだ

グララアガアってオノマトペ、一体何の音だろう?

おやおやこれは、象の声? そんな風には聞こえない。

独創的なオノマトペ。他にも稲扱器械の音が、のんのんのんのんのんのんと、何だか癖になってくる。

いつの間にやらボクだって、おんなじリズムでしゃべってた。

こいつは一本取られたね、リズムを取らねばいられない。

何にしたって面白い、愉快愉快な文章だ。

オツベルときたら大したもんだ?

オツベルときたら大したもんだ。

宮沢賢治『オツベルと象』青空文庫

こんな文章から始まる本文。

ところで、オツベルってなんであんなに褒められているんだろう?
このお話、一見するとオツベルってなんだか嫌な奴なんだよね。

お話の大筋は、たくさんの百姓の主人のオツベルが、突然現れた白い象を体よく自分のものにして、すっかり扱き使ってたら、結局他の象たちの怒りを買って、グララアガアってやられちゃうってもの。

しかも、オツベルは白い象がわざと弱っていくように、どんどん餌を減らしていっちゃうなんて酷いことまでしてたんだ。

なのに、このお話の語り手である牛飼いは、オツベルを大したもんだと言うんだよね。

最後の最後にオツベルは、象にやられてぺしゃんこになっちゃうんだけど、結局オツベルを非難するのは象たちだけなんだよね。

オツベルと象

さて、この白い象って、何のために来たのかな? 象とオツベルの関係ってなんだったのかな?

実は、象の中でもオツベルに扱き使われてたこの白い象だけは、オツベルに直接怒りをぶつけていないんだ。

他の象たちは、白い象への仕打ちに怒り狂っていたのに。

逆に、オツベルは、いつこの白い象がオツベルの企みに気付いて反撃されたりしないかって、ヒヤヒヤしてた。

こう見ると、悪いことしたオツベルが、その報いを受けたって勧善懲悪に見えるんだけど、本当にそれだけなのかなぁ。

ところで、オツベルは象に襲われる前、カラスの夢を見ていたんだけど、実はカラスの夢って、夢占いでは不吉なトラブルとか、災難を意味してるとも言われてるんだよね。

そのことを意識して書いているんだとしたら、もしかしたら他にもいろんな暗喩が隠れているのかも。

例えば、仏教での象って、元々豊穣を司る神聖な生き物で、中でも白い象は特別で、お釈迦さまの生母マーヤさんの夢でお釈迦様の誕生を予言した動物だったなんて伝説も残ってるらしいんだ。

そんな生き物をないがしろにしたんだから、罰が下ってしまったのかもしれないね。

何にしろ、自分と一緒に仕事をしてくれるヒトから搾取しようなんて考えは良くないんだ。
一緒にいる人がみんな、その成果を喜べるような関係が一番だよね。

ロジィの分析

語り手と時間

オツベルかね、そのオツベルは、おれも云おうとしてたんだが、居なくなったよ。

宮沢賢治『オツベルと象』青空文庫

この作品の語り手はある牛飼いであり、読み手(読者)は牛飼いからオツベルに関する話を聞くという構成になっている。

物語の時間に注目すると語り手はオツベルの身に起こった出来事を後から聞き、それを読み手に伝えるという形をとっている。

その出来事は全ての事が起こったあとではなく、途中途中で情報が更新されていくように進行していく。

その為、読み手は物語を読み進めるために牛飼いのもとに何度か足を運び、オツベルに関する新たな情報を聞くという形式になっている。

状況を打開する贈与者

「何だい、なりばかり大きくて、からっきし意気地いくじのないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいや。」月がわらって斯う云った。
「お筆も紙もありませんよう。」象は細ういきれいな声で、しくしくしくしく泣き出した。
「そら、これでしょう。」すぐ眼の前で、
可愛かあいい子どもの声がした。象が頭を上げて見ると、赤い着物の童子が立って、すずりと紙をささげていた。象は早速手紙を書いた。

宮沢賢治『オツベルと象』青空文庫

童話やおとぎばなしの世界では悪い状況を打開する際にしばしば魔法使いや特殊なアイテムなどの贈与者が現れる。

この贈与者の存在(行動)は物語の背後にある設計図(パターン)として観察可能であり、物語の機能の一つである。

月と赤い着物を着た童子はオツベルと象における贈与者であり、状況を打破するために必要な物語の機能としての役割をもつ。

ところで、この赤い着物を着た童子だが、どうにも岩手県の代表的な妖怪である座敷童に似ている気がしてならない。

赤衣の童子はオツベルの家に元々憑いていた座敷童ではなかろうか。

理由は、白象来るまでのオツベルが貧しいわけではなく裕福だったからだ。

座敷童の特性として、座敷童が家にいると幸運を与え、家から離れると不幸にみまわれるというものがある。

オツベルは彼の家に住む赤衣の童子によって、すでに幸運を与えられていた。

その赤衣の童子が白象の一件で家から離れてしまい、そこでオツベルの運が尽きたのかもしれない。

互いの感情や状況が反比例する物語

物語で唯一感情の動きが明確なのは象の感情である。

象は当初オツベルとの暮らしに満足していたが、オツベルの扱いがひどくなっていくにつれて象は疲弊し、感情がマイナスの方向へと動いていく。

その感情の動きは分かりやすく、餌の量が減っていくにつれて、不満が溜まっていっているようだ。

オツベルと象は、オツベルが豊かになるにつれ、象が疲弊し不満をつのらせていく。

彼らの感情のベクトルは反比例している。

オツベルの喜びが苦しみに変わり、臨界点を超えたとき、贈与者の力を借りることで象の反撃のシークエンスへと移り、象とオツベルの立場が逆転していくのである。

ナラとロジィの「オツベルと象」

ロジィ
ロジィ

私はオツベルが必ずしも悪人であるという風には見えなかった

ナラ
ナラ

えー、なんで?

ロジィ
ロジィ

オツベルの性格かな

ナラ
ナラ

性格?

ロジィ
ロジィ

彼の性格は基本的には寡黙で懐の深く、強がりで、親方気質がある人間に見えた

ロジィ
ロジィ

たとえば、冒頭のシーンでオツベルの仕事の仕方は作業場の監督のようなポジションにいて、基本的に部下にあれこれ指示をしていなかったり、象が作業場に入ってきて動揺をみせるものの、きちんと対峙しているところなんかはその性格が良く現れていると思う

ナラ
ナラ

まぁ、たしかに。象を追っ払わずに受け入れているところなんかは強がっているようにも見えるね

ナラ
ナラ

でも象を騙して拘束具を付けるシーンなんかは悪い人に見えるけど

ロジィ
ロジィ

そういう風にも見えるが、童話なんかでよくある悪魔や鬼を拘束しようとしているようにも見えなくはない

ナラ
ナラ

うーん、そう見えなくもないかな?

ナラ
ナラ

白い象は英語だと「維持費のかかるもの」「煩わしいもの」って意味があるみたいだね

ロジィ
ロジィ

オツベルは本当は良い人で本当に税金が上がって苦しんでたのかも

ロジィ
ロジィ

象に仕事を頼むたびに少しビクついていたのは逆上して襲われるのを恐れていただけのようにも見えるし

ナラ
ナラ

えー、でも象達に襲われたときわざと餌を与えずに力を落としてあるみたいなこと言ってるじゃん

ナラ
ナラ

そもそもあのシーンで象をとっとと手放しちゃえばいいのに

ロジィ
ロジィ

部下を安心させるために虚勢を張っていただけかもしれないだろ。俺は象をコントロールできているって強がっていただけかも

ナラ
ナラ

うーん、ちょっと飛躍しすぎな気もするけど。まぁそう見えなくもないか

ロジィ
ロジィ

牛飼いから又聞きしているっていう設定だからオツベルの真意は分からないけどね

ロジィ
ロジィ

だからこそそういう解釈もできると思うんだ

ナラ
ナラ

たしかに、そう考えると楽しみ方が膨らむ作品だね

コメント

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