【感想・考察】檸檬【梶井基次郎】

感想・考察 (4) 物語
この記事は約6分で読めます。
スポンサーリンク

※ネタバレ注意!
この記事には作品のネタバレが多く含まれております。未読の方はご注意ください。

ロジィ
ロジィ

檸檬は、大正14年に発表された作品だ。

ナラ
ナラ

その当時はあまり評価されてなかったみたいだけど、没後評価が高まって学校の授業でも取り上げられるほどの名作になったみたいだね。

ナラ
ナラ

檸檬という字をみると学校の授業風景が想起されるヒトもいるんじゃないかな?

ナラの感想

五感に訴えてくる文章

ストーリーは、まともな生活から転落してしまった主人公がえたいの知れない不吉な塊を抱きながら京都の街並みとともに流れていくというもの。

心理描写がすごく緻密で、読んでいるあいだは主人公と一緒に物思いに耽っているような気分だった。

街の喧騒の中、一人フラフラ、ぼんやり考え事をしながら歩いてる感じ。

五感に訴えてくる描写も面白かった。

おはじきが口の中でカラコロと鳴る冷たく心地よい甘み

丸善の本棚で積み上げた本の上に檸檬をポンと載せたときの、空気がパッと変わる瞬間

が特に好きだったな。

丸善と檸檬、過去と現在

檸檬と丸善、これらは主人公にとって、どんなものだったのかな。

ボクは丸善が過去の象徴、檸檬が今の象徴だと思った。

主人公にとって、過去は懐かしむものじゃなくって、今を惨めにするものだったんだ。

彼は無意識のうちに、過去を想起させるものを避けていたんだと思う。

そんな彼を変えたのが、檸檬。

檸檬は、彼を過去と比較してしまうことから呼び戻してくれるものであり、面白いインスピレーションを彼にもたらした。

その閃きは、突拍子もないものだったけど、過去の象徴である丸善を木っ端微塵にした。

丸善は、もう過去を思い出す息苦しい空間なんかじゃなくて、檸檬の城が鎮座する奇妙なお店になったんだ。

心の在り方と世界の見え方

面白かったのは、心の在り方次第で何でも違って見えるんだなってところ。

主人公は、檸檬を手にした時からすっかり気分を良くしている。

でも、これは彼の気分が変わっただけで世界そのものは変わってないんだよね。

嫌な気分の時は、世界で一番自分が不幸になったような気がして、良い気分の時は、世界に自分が祝福されているかのように思えたり。

いつも気分良く過ごせればいいけど、そのために苦心するのは何だか本末転倒だね。

彼の檸檬みたいに、自分なりのスイッチがあると良いのかもしれない。

ロジィの分析

檸檬が男の感情の物語へと誘う

いったい私はあの檸檬が好きだ。

梶井基次郎『檸檬』青空文庫

うだつのあがらない生活をしている男は放浪の末、たどり着いた果物屋で檸檬と出会う。

檸檬は、男にとってちょうど良い慰めだった。

この檸檬との出会いがのちの物語を誘引する出来事となっている。

檸檬との出会いは男にとって感情がプラスになるキッカケであるのと同時に、葛藤への幕開けを匂わせている。

男は檸檬で強くなり、それゆえに困難に陥る

平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた。

梶井基次郎『檸檬』青空文庫

檸檬と出会った男は良い気分で街を練り歩く、普段は絶対に近寄らない丸善の前に来てしまうほど男の気分は高揚していた。

勢い、天敵の丸善に飛び込むが、そこで気力が萎えてしまう。

檸檬の力でプラスに向いた感情が丸善によってまたマイナスに戻されてしまう。

この丸善への侵入が場面転換点であり、葛藤の幕開けに思う。

男はここで、再びうだつの上がらない無気力な私に逆戻りしてしまったのだ。

檸檬の反撃

その時私はたもとの中の檸檬れもんを憶い出した。

梶井基次郎『檸檬』青空文庫

檸檬を思い出したとき、男の反撃が始まる。

檸檬の力を手にした男は自分を無気力にさせてしまう画集を資材にして檸檬の城を築く。

そして、清々しい気分で丸善から脱出するのであった。

この物語は感情がマイナス、プラス、マイナス、プラスと綺麗な波形を描きながら進行している。

梶井基次郎の檸檬が名作だと言われるのには、この様式美に富んだ構成があるからかもしれない。

ナラとロジィの「檸檬」

ロジィ
ロジィ

物語を外から観るか、内から観るか

ナラ
ナラ

どういうこと?

ロジィ
ロジィ

読書を舞台に例えるなら、読者は舞台上でキャラを演じることも客席で観ることもできると思ったのさ

ロジィ
ロジィ

ナラは前者で、私は後者の読み方をしそう

ナラ
ナラ

あー、たしかに

ロジィ
ロジィ

ところで、ナラは丸善の本棚で積み上げた本の上に檸檬をポンと載せたときに世界の空気がパッと変わる瞬間が好きだと言っているね

ナラ
ナラ

そうだね

ロジィ
ロジィ

そこがちょっと分からない

ナラ
ナラ

え、なんで?

ロジィ
ロジィ

客席側の視点だと、あそこのシーンは奇行でしかない。もし私が丸善の店員だったらえらい迷惑

ナラ
ナラ

まぁ、そうだけどさぁ

ロジィ
ロジィ

なぜ、あんなことをしたのかな?

ナラ
ナラ

え、ちょっとロジィ怒ってない?

ロジィ
ロジィ

やはり書店員としては許しがたい行為だからな

ナラ
ナラ

ボクがやったわけじゃ……

ナラ
ナラ

ってか、ロジィって書店員だったの?

ロジィ
ロジィ

いや、働いたことないな。生まれてこの方ずっとウサギだ

ナラ
ナラ

なんだよー!

ロジィ
ロジィ

だけど、気になるポイントではある。私(客席)から見たら奇行にしか見えない行為をナラ(演者)はどのような感情で動いていたのか

ナラ
ナラ

んー、あくまでボクの主観だけど、主人公ははじめ抑鬱感が胸を支配していたよね?

ロジィ
ロジィ

うん

ナラ
ナラ

とくに幸福な過去を思い出させるようなことに対して忌避感のようなもの感じていたんだ

ロジィ
ロジィ

ほう

ナラ
ナラ

だけどブラブラと京都を歩いている内に大好きな檸檬に出会った

ナラ
ナラ

そこで主人公は少しだけ元気になって、勢い丸善に飛び込むんだけど、そこでまた幸福だった過去を思い出してしまい気分が塞がってしまう

ロジィ
ロジィ

ふむ

ナラ
ナラ

とくに今まで好きだった画集とかがもうダメで、昔はあんなに夢中だったものが全く響かなくなった

ナラ
ナラ

開いては閉じ、開いては閉じをくり返すうちに主人公はあの行為を思いついたんだよね

ナラ
ナラ

そしてそれは幸福だった過去からの決別や開放を意味していたんだと思う

ロジィ
ロジィ

なるほど、貴重な自供をありがとう

ナラ
ナラ

え、ボク逮捕されんの?

ロジィ
ロジィ

冗談だよ。つまりあの行為は彼にとってちょっとした思いつきではあったが、確かに重要な、儀式めいた行為だったってことかな?

ナラ
ナラ

うん、ボクはそう解釈したよ

ロジィ
ロジィ

なるほどね、ルーティーンみたいなものか

ナラ
ナラ

いや、アレを毎日くり返したら流石に出禁になるでしょ

コメント

タイトルとURLをコピーしました